そうさ。
 君の気持ちが解る人間なんて誰もいないさ。
 他人の心が見える人間なんて、居る訳が無い。
 でも、こんなに広い世界で、君は生きている。
 本当にそうだ。
 こんなにだだっ広い大地の上で、
 君は呼吸し、本を読み、
 日記を書く。
 その手は果物を取る手だ。
 両足は靴を履く為に在る。
 目は見る。雑踏を。建物を。
 口は飲み込む。悔しさも。
 
 大地の上で地平線に向かって物を放り投げても、
 届くわけが無い。
 君の耳に快い音楽だからって、
 見知らぬ人が聞いているかどうかなんて、
 それこそ、誰にも解らない。
 だから、見上げて御覧。
 ほんの、時たまには
 気が向いた時で良いから。
 空は其処に在る。
 青い色で、僕らに微笑んでいる。
 やあ、元気かと輝きながら、笑っている。
 歩き続ける君だから、きっと、
 目をつぶっていても、見えるよ。
 
          End
               
                                 2004/05/31